破壊と生成
20歳最後の日にしたいことはなんだろうと考えた結果、工事現場を見に行くことだった。
工事現場は良い。作っているはずなのになぜか破壊しているようで、でも確実に完成に向かっている。
渋谷のヒカリエの展望スペースまで行き、1人で雨の降る街と人の流れと眼下の工事現場をしばらく眺めていた。
空は曇っていて、たくさんの人が傘をさしスクランブル交差点を一定の間隔で行き来していた。絶え間なく電車が走り、ビルに映しだされた広告がチカチカと何かを発信し続けている。
でも、外の騒がしい世界とは対照的に室内で見るそれはやけに静かだった。人が何かに向かってせわしなく動く渋谷の様子とは全く別の次元で、台風のためかあまり人もおらず雨音さえも遮断された静謐な空間 、
そこで確実に私は何者でもなかった。1人で、どこの世界にも属していなかった。身体と肉体から、精神から、私という名前を持った個体から解放され別の存在になれたのだ。
気がつくと泣いていた。これまでの全てのことが思い起こされた。私が傷つけてしまった人のこと、変わっていく周囲の人間、変わっていく自分。
明日私は1つ歳をとる。それは世界と溶け合うことからまた一歩遠ざかるのかもしれない。
それでも、自分という存在、全てをひっくるめて愛すよ。
また会える日を信じて。